魔法少女リリカルなのはA’s+ - After Story -  〜Epilogue〜













「はやてが?」


「うん。レティ提督から独立して、やりたいことがあるって言ってた。いま、二等陸尉だって」


 管理局で忙しいなか時間をとった二人の時間。雑談の中でなのはから伝えられた内容に、へぇ、とユーノは相槌を打った。

 互いに気持ちを伝え合い、晴れて恋人同士となってから既に三ヶ月。オリジン事件を追っている間にも、なのはたちは十六歳になっていた。

 といっても、そこまで状況がめまぐるしく変わってもいない。

 相変わらずユーノは無限書庫で司書として忙しくしているし、なのはは、


「わたしも、三等空尉。……いきなり尉官っていうのも、ちょっと疑問だけど」


 教導隊の中でも一番の出世頭として、順調に日々を過ごしていた。


「まぁ、なのはは教導隊でも活躍していたからね。エースって言われてるんだし」


「あはは、ちょっと恥ずかしいんだよねぇ。なんとかならないのかなぁ」


 苦笑してテーブルに置かれたカップに口を付けるなのはを、ユーノは微笑んで見つめている。

 教導隊でいる時の凛々しいなのはとは違う、どことなく甘えたような自然体のなのは。自分の前でそんな姿を見せてくれることが、ユーノは何よりも嬉しかった。


「しょうがないよ。それだけなのはが頑張ってるってことなんだから、いいんじゃない?」


 ユーノの言に、そうかなぁ、と呟いてなのはは気難しげな顔をしてみせる。


 なのは自身、本当に嫌になっているわけではない。ただ、自分なんかが、と思ってしまうのも事実だからだった。

 そんな気持ちを察して、ユーノもなのはに対している。そしてそれがわかっているから、なのははユーノと何を隠すこともなく向き合えるのだ。

 そんな二人の空気を、なのはは大切に思っている。同時に、彼とこうなれてよかったとも。


「……でも、やりたいことをやろうと思ったら、少なくとも佐官にはならなきゃ。はやても大変な道を選んだね」


「うん。……だから、わたしもフェイトちゃんも、何かあったらはやてちゃんを助けてあげるつもり」


 カップをテーブルのソーサーの上に置いたなのはは、真剣な面持ちで自らの気持ちを口にした。

 友達が力を貸して欲しいと言ったら、喜んで力を貸す。たとえ言われなくても、困っているなら手を差し伸べる。それは彼女ら三人がお互いに思っている共通事項だった。

 意識しているにせよ、そうでないにせよ、その三人の互いを大切に思う関係はとても大事なものだとユーノにも思える。

 こんな娘だから、自分は好きになったのだとこういう時にユーノは実感するのだった。


(まぁ、少し妬けるけどね……)


 考えて苦笑する。

 しかし、嫉妬するほどに仲のいい友達というのは、それはそれで素晴らしいものだと思う。

 自分にそんな友人がいるだろうか、と頭をひねって、浮かんだ顔がクロノだったので、ユーノはすぐにその考えを打ち消した。

 とりあえず、自分のことはさておいて、なのはたちはずっと今の友情を育み続けていくことだろう。

 それは嫉妬するよりもずっと、嬉しいことだった。


「うん。なのはなら、そう言うと思ったよ」


 だから、ユーノはなのはにそう返す。

 それになのはは嬉しそうに、にっこりと笑う。

 これが二人にとって一番の時間。お互いに、お互いの事情を全てわかった上で、受け止めてくれる、と思える時間。

 なのははユーノを。ユーノはなのはを。多忙な日々の中でも、こうした日があるから、この仕事も楽しいものだと思えるのかもしれない。

 もちろんそれだけではないが、ユーノと過ごす時間が心地いいものであると常々思うなのはは、その考えを完全に否定できなくて、苦笑をもらした。


 そんな穏やかな時間に、唐突に呼び出し音が響く。なのはのほうからだった。


「はい、なんですか?」


 空中に開かれたウインドウに、なのはは問いかけた。


『あ、はい。高町教導官、至急来て欲しいそうです』


「あの、仕事は終わらせてきたはずですが?」


『それが……その、急に入った仕事でして……』


 なのはの文句に、ウインドウ越しの彼がしどろもどろになって慌てている。

 それを微笑ましくも思うが、見かねたユーノは助け舟を出した。


「なのは、今日はここまでにしようか。また今度、会おう」


 ユーノが言うと、なのはは申し訳なさそうにユーノを見た。


「うん……ごめんね、ユーノくん」


 いいって、とユーノは笑って返した。

 それに微笑んで、なのははウインドウに向き直る。


「それでは、今から向かいます。教導隊の隊長室に?」


『え、ええ。そこに行ってください。では』


 ほっと息をついた姿が空中から消える。

 なのはははぁ、とため息をついた。


「……ホント、ごめんねユーノくん」


「いいよ。なのはって急な仕事が入る時って多いしね」


「うん……」


 空を任せたら右に出るものはいない、とまで言われ始めた腕前のなのはは、空戦の必要性が高い武装局員の教導に引っ張りだこである。

 そのせいか、当初は予定になかった仕事も入りこんでくることが結構多くある。人手がいないのだから仕方がないとはいえ、少しは遠慮して欲しいとも思うなのはだった。


「それじゃあ、僕も仕事に戻るよ。まだ皆に任せたままだからね」


 ユーノも立ち上がって、カップとソーサーを手早く片付けていく。洗うのはあとでいいか、と考えてシンクに入れて水を入れておく。

 ある程度片付けてお茶を楽しんでいた場所に戻ると、なのはがそこで待っていた。

 笑って、ユーノはなのはに近づいていく。


「それじゃ、行こうユーノくん」


「うん」


 すぐに別れると知っていながら、二人は小さく手をつないだ。

 そしてそのまま空気音と共に部屋の外へと踏み出していく。


 手を伸ばしあい、結ばれあった想いは繋いだ手のような温かさと心地よさを伴って。


 なのはとユーノは一歩ずつ新しい道へと進んでいく。


 それぞれが、それぞれに出来ることをやりながら、迷うことなく目指すところに。


 向かうところは違っても、一緒にいることは確定された未来。


 繋がれた手は、それを象徴するかのように温かく、また確信させるほどに力強く、お互いの手を握り返していた。

















―――The End









あとがき


「魔法少女リリカルなのはA’s+ - After Story -」ようやく完結いたしました〜!

いや〜、長かったですねぇ。時間なかったり、サボったりするからこれだけかかったんですけどね。
とにかく、これにてこのお話はおしまいです。

なのは×ユーノのSSが驚くほどに無い! ということで始めたこの小説も、ずいぶんと長く続きました。
最終的にはちゃんとなのははユーノとくっつき、事件のほうも無事終結。
何気にもう「StrikerS」のほうが始まっていたので、ちょっとそっちにお話を繋げてみたエピローグを書いてみたりw
気に入っていただけたら幸いです。


長い間、「A’s+」をありがとうございました。
書いている私も楽しませていただきました。
それでは、またこちらで連載しているSSなどをよろしくお願いします。
「なのは」もまた少しずつ何か書けたら、と思います。

では、ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!



雪乃こう