魔法少女リリカルなのはA’s+ - After Story - 「―――……なんか、結構大事になってきたねー」 「うん……それに、デバイスたちの親って話も驚いた」 「せやなぁ。それに、事件自体も単純な魔力漏れじゃすまんくなってきとるしな」 なのは、フェイト、はやてがそれぞれ今回の事件について話しながら艦内を歩いている。さっき終わったばかりの会議の内容は、嫌が応にも考えさせられる内容だった。 「……そういえばはやて。シグナムたちはどうしたの?」 フェイトはきょろきょろと辺りを見回すが、そこに守護騎士たちの姿は一人も無かった。 「ああ、シグナムたちには先に帰ってもらったんよ。今頃は家で夕飯の支度でもしてくれてるはずや」 「シグナムさん、お料理できたっけ?」 「ううん、出来へんよ。いまシャマルに習ってる最中や。シャマルもここのところえらい腕を上げたからな〜」 「そ、そうなんだ……」 以前、はやての家に遊びに行ってシャマルの料理を食べた時のことを思い出して、フェイトは苦笑いを浮かべた。決して、まずいというわけではなかったが……シグナムの言葉を借りると、実に微妙な味だったのだ。 それ以来、お客様が来るときの料理ははやてが全面的に担当することになり、シャマルの料理を食べる機会はなのはもフェイトも長い間なかった。しかしどうやらしっかり勉強していたようだ。 「ホントは私が教えられたらよかったんやけどな。学校もあるし、その間に習っとるみたいなんよ」 「へぇ……」 「ね! それなら、また今度お邪魔していい?」 「もちろんや! 二人ともぜひまた来てな」 なのはの提案に笑顔で了承するはやて。フェイトもその隣で嬉しそうに微笑んでいる。 「うん。じゃあ、また近いうちにお邪魔するね」 「にゃはは、楽しみだね〜」 アースラの廊下を楽しそうに話しながら歩く。話している内容は事件のことから既に日常に移っている。事件があるからといって、気負うこともなく、三人はいつも通りの態度だった。 「……なのは」 一人を除いては。 「あ……ユーノくん」 突然目の前から声をかけられ、思わず足を止める。……いや、そうではない。思わず足を止めてしまったのは、声をかけてきたのが彼だったから。数歩あるけば届く先に立っている姿が、ユーノだったからだった。 なのはは知らず頬が紅潮していくのを感じた。 「なのは?」 「なのはちゃん?」 突然足を止めたなのはを訝しみ、フェイトとはやても足を止める。そんな二人になのはは顔の赤さを悟られないように笑いかけた。 「……に、にゃはは。二人は先に行ってて。私も後で行くから」 「?……うん」 「……ほんなら、すずかちゃん家に行っとるから。なのはちゃんも後から来てな」 「うん、了解!」 ことさら明るく振舞うなのはが最後まで腑に落ちない二人だったが、ユーノを追い越してなのはの言う通りそのまま廊下を進んでいった。 これで、この場に残ったのはなのはとユーノだけである。 「―――ゆ、ユーノくん?」 「あ、いや……その、さ」 顔を赤くして頭をかくユーノ。それを見て更になのはも照れてしまう。 二人とも思っていることはさっきのことだ。クロノからの呼び出しでうやむやのままになっていた、公園での出来事。 ―――まるで、告白でもするような、そんな空気だったこと。 否。なのはにとっては、まさにそうだったともいえる。うやむやになってしまったが、なのはは間違いなく二人の関係を変えたいと望んだのだから。 「な、なのはは……」 だから、なのははユーノの言葉にどきりとしてしまう自分をことさら意識して感じてしまう。不安や逃げ出したい気持ちはもちろん、心地よい高揚も一緒に。 ユーノは今この時になっても、腹を決めかねていた。なのはのことは、好き、である。それはもうずっと前から想っていた気持ちであるし、彼女の隣に立つのは自分でなければ許せない、というような子供っぽい……しかしそれゆえに一途な恋愛感情を、ユーノはずっと昔から心の中に持っている。 彼女の隣にいたい。自分は彼女のことが好きなのだから、と。 しかし同時に、ユーノは思う。 ―――では、彼女の隣に立った時。自分は彼女に何をしてあげられるだろう。 その答えが出なかった。 ユーノはもともと行動よりも理論で物事を進めるタイプである。まずは熟考し、そして行き着く結果に対するルートを確保しなければ行動に移さない。 なのはと共に過ごし、彼女の無茶とも言えるような行動に付き合ってきたことでユーノもいくらか変わってきてはいる。が、それでも根本でユーノはまず何か裏付けを探してしまうのだった。 彼はそんな自分が嫌いだったし、これまで出来るだけ意識せずにそれと付き合ってきた。それに、なのはといる中で自然とそんな自分が改善されて強くなっていくのを感じていることもあった。だからこそユーノは自然に任せ、あえて自らその部分を矯正することはなかった。 ―――しかし、いま試されているのはまさにその部分だった。 裏付けもなく、相手のこともわからず。ただ自分の気持ちを相手に伝える。ユーノの場合、それは結果をある意味で度外視していると言ってもいい。なぜなら、気持ちを伝える段階で、彼は自分の弱さに向かい合っている最中だからである。そこに存在するのは自分との葛藤、戦いだけである。結果は自然と二の次になる。 まずは伝えること。 つまり、それはこれまでの彼の考え―――結果を得ることを最優先としていた彼の考えとは正反対の考え方である。 自分と向き合う。向き合える強さを持つ。それが出来なくて、どうして彼女の隣に立てるだろうか。 彼女と会って、少しずつ変わっていった自分。彼女の明るいところに少しずつ影響されていっている自分。そのことをユーノは、勝手だがなのはに力をもらっているのだとも思っていた。本当に勝手な考えでユーノ自身恥ずかしいと思っているが、しかしそれ以上にどこか嬉しかった。 そして同時に後ろめたかった。 ユーノはなのはから沢山のことを学んだし、なのはと共にいることで自分は成長してこれたと思う。 だが、なのははどうだろうか。 自分の隣にいて、なのはが得るものはあまりに少ない。彼がなのはにしてあげられたことなど、魔法についての知識や技術の指導と戦闘での補佐、それだけだ。知識や技術なんてものは時を経れば確実に覚えたことだし、戦闘補佐だって自分である必要はどこにもない。そもそもその教師役ももうずっと前に役目を終え、サポートも司書になってからというもの一度も現場自体に行っていない。つまり、ユーノの役目はすべて終えているとも考えられるのだった。 だからこそ、ユーノは不安になるのだ。自分で自分に、なのはにとっての価値を見出せないから。 それでも、ユーノは確かになのはを想っている。 なのはの存在は、時を経るごとにユーノの中でとても大きな存在になっている。 そう、色々と考えるのはあとにしなければいけない。 まずは伝えること。それをなのはから学んだのではなかったのか。 フェイトとの出会いや、リインフォースとの別れからそれを教わったのではなかったのか。 まずは伝えること。 ごくり、とユーノの喉が鳴った。 「―――なのは、は」 「ユーノくん……?」 なのはの不安げな声を聞いて、それでも。言わなければ、と思って、それでも。 脳裏によぎるのは、彼女にとってお前である理由は何だ、という言葉―――。 「―――……いや……なんでも、ないよ」 |
| ―――To Be Continued |