魔法少女リリカルなのはA's+ - After Story - - プロローグ - ロストロギア『闇の書』の事件からはや六年。 私たちは15歳となり、それぞれが自分の進むべき道を見つけて、その道の先を目指している最中です。 私こと高町なのはは、時空管理局の武装局員の戦技教導官兼捜査官として。 フェイトちゃんは、名前をフェイト・テスタロッサからフェイト・T・ハラオウンに変え、アルフさんと一緒にかつてクロノくんもそうだった執務官として。 はやてちゃんは守護騎士ヴォルケンリッターの皆さんと一緒に捜査官として。 ユーノくんは無限書庫で司書兼学者さんとして。 エイミィさんやアースラの皆さんも、艦長となったクロノくんの下で。 それぞれがそれぞれの道で、それぞれの人生を生きています。 ……と、まぁこんな感じでみんな元気に頑張っています。 様々な事件、様々な出来事、そしてその中で作られてきた私たちの絆。 絆は結び紡がれ、解けることなく続いていく。 これまでも、そしてこれからも……。 魔法少女リリカルなのはA’s+始まります。 1/管理局 白い防護服に身を包まれた少女が、エメラルドグリーン一色の壁で覆われた広大な部屋に立っている。長い栗色の髪を左側でポニーテールにしてまとめ、右手には赤い宝石を起点とした桜色の杖を床に立てるように握っている。 少女―――高町なのはは目の前の光景を眺めて、ひとつ満足げに頷いた。 ちらり、と壁に表示されているデジタル時計を見る。現在時刻PM13:50。訓練が開始されてからすでに60分が経過している。 ここは管理局本局の中にある施設の一つ、トレーニングルーム。どんな魔法戦にも対応できるよう特殊な防御魔法を部屋全体にかけた、時空管理局本局の中でも1、2の強度を誇る部屋である。 しかしその部屋は現在教室となっている。 それを証拠付けるように、壁時計の下の小さな電光掲示板には『現在、戦技教導中』と表示されている。 つまり、現在ここはトレーニングルームではあるが、戦技教導官高町なのはによる準武装局員の実技指導中の教室となっているのであった。 ぱちぱち、と手を叩く音が広い部屋に響き、杖による模擬近接戦闘を行なっていた武装局員たちが手を止め、いっせいになのはのほうを見た。 「皆さん凄いです。もうホントに本隊に配属される日も近いですね」 にっこり、と嬉しそうになのはは微笑んだ その笑顔に局員たちはわずかに視線を逸らし、うつむきながらも一人が口を開いた。 「そんな……ぜんぶ高町教導官のおかげですよ」 局員の言葉になのはは一瞬キョトンとしたが、次の瞬間には照れて白い頬を赤く染めた。 「あ、あはは、そんなことはないですよ〜。私なんか、ちょこっと横から口を出しただけですし、皆さんが凄く頑張ったからこそですよ!」 なのはは照れ隠しに持っていた杖をぶんぶんと上下に振る。と、不意にひどく機械的な声がなのはから聞こえてきた。 ≪Master≫ 「あ、ご、ごめんねレイジングハート。その…振っちゃったりして」 ≪Don’t worry , but please more slowly next time(お気になさらず、でも次はもう少しゆっくりにしてください)≫ 「うぅ……。レイジングハート、最近性格悪いよ……」 ≪I’m sorry , my master(申し訳ありません)≫ 声はなのはの右手、そこに握られている桜色の杖から発せられていた。 なのはのパートナーともいえる魔法の杖。インテリジェント・デバイス、レイジングハートである。意思ある杖として、これまでなのはの力となり共に戦ってきた、魔導師たるなのはの象徴ともいえる存在だった。 しかし、ことに最近このデバイスはなのはに意見を述べることもある。主に戦闘中のアドバイスだが、こんなふうに皮肉まで言うことができるとは、なのはもこれまで知らなかったことだった。 「もぅ。……でも実際私が得意なのは中距離砲撃が主ですから、やっぱり皆さんの力ですよ。近接ではいまだにフェイトちゃんに勝ったことないですし……」 なのはの友達の一人、執務官フェイト・T・ハラオウン。なのはが中距離単独戦闘のエキスパートなら、フェイトは近接戦闘のスペシャリスト。八神はやての守護騎士ヴォルケンリッターの将、剣を冠するシグナムとも渡り合う近接戦闘では局内随一の実力の持ち主だった。 それを知っていて、しかも最近の模擬戦でも近接戦闘で連敗を喫しているなのはは、少し苦笑気味に話す。しかしそんななのはに局員は反論した。 「い、いえ! それでも我々は高町教導官に感謝しています。たとえ我々自身の力でここまで強くなれたのだとしても、力の使い方を教導官は教えてくれましたから!」 その局員の言葉に他の局員たちも大きく頷く。その思いもしなかった感謝の気持ちに、なのはは驚きつつも素直な感謝と嬉しい気持ちが心を包んだ。 「そ、そんな私なんか……。でも、あの、ありがとうございます」 なのはは言ってすぐに照れて、再び杖を振ろうとしたが、またレイジングハートに何か言われては恥ずかしいと思い、上げかけた手をゆっくりと下ろした。 と、その瞬間を狙ったようなタイミングで唐突にトレーニングルームの扉が開かれた。 「なのは」 現れたのは眼鏡をかけた、なのはと同年と思われる少年だった。淡い栗色の髪をうなじの辺りでしばり、しっぽのように背中に垂らしている。ユーノ・スクライア。現在は無限書庫の司書兼学者として多忙な日々を過ごす、なのはの友達の一人である。 六年前、『P・T事件』の発端となったロストロギア『ジュエルシード』を発掘した当人であり、なのはに魔法の力を授けたなのはの師匠ともいえる存在だった。 現在では魔導師としての仕事はないに等しいが、本人も強力な結界魔導師であり、これまでも何度となくなのはのサポート役としてなのはを助けてきた、なのはの理解者でもある。 「ユーノくん!」 ユーノの姿を確認すると、なのはは入り口まで小走りで向かいユーノと向き合った。 「もうお仕事終わったの?」 「うん。簡単な整理だけだったから、意外と早くに片付いたんだ。トレーニングルームまで来てみたらもう終わったみたいだったから、覗いてみたんだけど」 「え?」 そう言われて壁時計の下の電光板を見てみる。そこには『PM14:20予約有り』と表記されていた。 「あ……」 どうやらもう訓練室の使用時間を過ぎてしまっているようだった。 「忘れてた?」 「あ、あははは……。ユ、ユーノくん! それよりそろそろ行かなきゃだよね!」 「え? う、うんまぁ」 「じゃあすぐ行かなきゃ! フェイトちゃんたち待たせたら悪いもんね」 誤魔化すような態度のなのはに苦笑をもらし、ユーノは頷いた。それを確認すると、なのはは訓練室の局員たちに振り返る。 「それじゃあ、今日はお疲れ様でした! 皆さん、これからも頑張っていきましょう!」 最後にぺこりとお辞儀をして、なのははユーノに並んで訓練室を出た。 そして、残された局員たちは、 「……やっぱり、高町教導官かわいいよな」 「ああ。でも確かあの眼鏡の人、無限書庫の司書の人だろ?」 「……あの人と、付き合ってるのかなぁ」 そんな会話を続けていた。 |
| ――― To Be Continued |